農業分野の世界遺産!最近ニュースでも話題の“世界農業遺産”って何?

SDIM3100 by akira.takiguchi

“世界遺産”の話題を耳 にすることが多くなってきた。世界文化遺産に登録された富士山や世界自然遺産に選ばれている知床や白神山地などニュースでも“たびたび世界遺産”を取り上げている。

農業分野にも世界遺産がある。最近、次の候補地が選ばれニュースでも話題になっている世界農業遺産だ。

 

世界農業遺産とは?

世界農業遺産(GIAHS: Globally Important Agricultural Heritage Systems、ジアス)とは、社会や環境に適応しながら何世代にもわたり発達し、形づくられてきた農業上の土地利用、伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ、世界的に重要な地域を次世代へ継承することを目的に、国連食糧農業機関(FAO)が2002年(平成14年)から開始したプログラムです。(農林水産省

日本国内にある世界農業遺産は5地域

現在、日本国内では平成23年に佐渡地域と能登地域が登録されたのを皮切りに5地域が世界農業遺産に認定されている。
①「トキと共生する佐渡の里山」新潟県佐渡市
②「能登の里山里海」 能登地域4市4町で構成する能登地域GIAHS推進協議会(七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋市、 志賀町、中能登町、穴水町、能登町)
③「静岡の茶草場」静岡県掛川地域4市1町(掛川市、菊川市、島田市、牧之原市、川根本町)
④「阿蘇の草原の維持と持続的農業」 熊本県阿蘇地域1市3町3村(阿蘇市、小国町、南小国町、産山村、高森町、南 阿蘇村、西原村)
⑤「クヌギ林とため池がつなぐ 国東半島・宇佐の農林水産循環」大分県国東地域4市1町1村(豊後高田市、杵築市、宇 佐市、国東市、姫島村、日出町)

tea plantation_10
tea plantation_10 / ajari

農業の文化的価値とは?

世界農業遺産が推奨する継承するべき農業の文化的側面とは何か?ここで参考になるのは、文化人類学者 山口昌男が 、井上ひさし著「農業講座」の中で書いている文章だ。ここには“農業には、潜在的な芸能性がある”と書かれている。これは農業が降雨祈願、豊作祈願や、疫病や災害が起こらないように祈祷するなど祭りと密接に関わっていた風習を元に示していることが伺える。逆に産業的になった現在の農業には“芸能的な要素が労働の中に入っていない”と山口氏は指摘している。昔から農業には産業としてだけでなく、文化芸能的な要素があったのだ。

農業の文化的な価値は、祭りなどの人間が関わる事柄だけではない。農業には自然を守り、豊かな環境を後世にも受け継ぐように循環させる役目もある。農業は自然がなければ成り立たない。当たり前だが、農薬や化学肥料の問題などの環境問題は常に農業者が考えなければいけない。農業の文化的な価値には、世界農業遺産が推進しているように景観・生物多様性などの自然環境も考慮されているのだ。

このように農業の文化的な価値は、農業に関わる風習と自然環境を含めた幅広い視点、さらに後世も見据えた長期的な活動を指す。3つの要素がうまく噛み合って農業の文化的な価値が育まれている。

Sacred Car
Sacred Car / New York Public Library

 

世界農業遺産 ≠ 観光地では?

世界遺産と聞くと、どうしても登録されて知名度をあげて観光につなげるような風潮を感じる。確かに、そのような一面もある。だが、世界農業遺産への登 録は、観光地化を目的にするべきではない。そもそも世界農業遺産が優れているのは、農業の産業としての機能だけでなく、文化として継承するべき価値を見出している点だろう。その土地で受け継がれてきた農法や、祭りを含めて農業文化、そして自然環境。これらを後世に受け継ぐためにも 今いる人は、目先の観光に走りすぎずに文化や自然環境を維持するために行動していただきたい。

 

これからの農業は大規模化して効率を上げるだけではない。世界農業遺産のように農業の文化的な価値を認めて、後世に残していく活動も必要だ。この世界農業遺産を機に自分たちの地域でも農業の文化的な資源を探してみてはどうだろう?

きむらゆうきち

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